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中国での開発

企業が中国進出時に留意する点、製品を上市するには

 

人口動態の変化、生活水準の向上、生活習慣病の増加、健康意識の高まりなどを背景に、中国のヘルスケア分野の成長は著しく、コロナ禍で海外からの人の出入りが難しくなってからは、むしろ中国国内の製薬企業が活発な動きを見せています。

 

中国の政策変遷

かつて、製造業の国であった中国はイノベーションを伴う新薬開発については非常に保守的な制度を維持していました。巨大な人口を抱える皆保険の国でありながら、質の悪い後発品に市場が席巻されており、中国国民が健康に関する正しい知識を身につけることを狙いとした政策が長年検討されてきました。それらの検討を経た2016年、総合的な健康政策である「“健康中国2030”計画要綱」(以下、「健康中国2030」)が政府から打ち出され、ヘルスケアが国家戦略の大きな目標の一つに位置づけられたのです。この「健康中国2030」にはヘルスケア産業を強化、拡大し、国の基幹産業にまで高める。が明記されています。

それと時をほぼ同じくして、中国はInternational Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議。以下、「ICH」)に加入しました。

この二つの政策が大々的に海外のヘルスケア企業に門戸を開くことになり、更にはヘルスケア産業への投資を中国に呼び込むことになり、現在もなお活発な投資とIPOが行われています。

中国臨床開発の状況

このような政策の変化に後押しされ、中国における臨床開発の手続きは大幅に科学的かつ合理的に修正されました。以前は中国に自社工場を持った会社だけが、中国での薬の販売許可を受けることができましたが、今では中国全土で製造委託をすることが可能です。中国国外で承認された医薬品も中国国内で独自に治験を実施する必要があった規制からドラスティックに変わり、中国を含んだ世界同時開発戦略を奨励するまでに変わりました。

中国独自の規制:人類遺伝資源管理条例、サイバーセキュリティ法

中国の科学技術部によって人類遺伝資源管理条例(Human Genetic Resource Administration of China以下、「HGRAC」)が実施されており、中国におけるヒト遺伝子資源の収集、保存、使用、輸出が厳しく制限されり、中国国外の製薬企業が行う臨床試験を始めあらゆる医療、科学プロジェクトに事前承認を得る必要があります。プロジェクトの実施に事前承認を得る必要があるだけではなく、例えば血液サンプルを国外の研究所で解析するための輸出手続きは、かなりの時間がかかり、許可が得られるの可能性も予測できません。また、許可のためには特許や著作権などを中国当局に開示することが求められていることから、知的財産権についても考慮する必要があります。加えて、2021年6月1日に施行されたサイバーセキュリティ法もあるため、これらの最新情報をキャッチアップし、無駄なく手続きを完了させるためには中国現地の企業とのパートナーシップが必須となります。

まとめ

中国で新薬を上市する場合、現在様々な方法が用意されているため、まず自社の製品がどのカテゴリーの、どの申請方法をとることができるのか、そのメリットデメリットを現地の専門家を交え協議する必要があります。近年はNMPAの下部組織であり審査部門である中国国家薬品監督管理局医薬品審査センター(Centre for Drug Evaluation以下、CDE)が相談を受け付けているため、手持ちの資料と開発計画の全体像を中国語で用意して臨むことで、ある程度の回答を引き出すことができるようになりました。日本の薬事申請制度と同様、緊急承認や優先審査など審査のタイムラインを短くするスキームは用意されていますが、そのための条件を満たしているのか、どこまで臨床試験の数を減らすことができるのか、その結果薬価にどう影響するのかを複合的に判断する必要があります。CDEはインターネット上、電話、FAX、電子メールなどを通じて一般的な問題について相談できる窓口を設けている他、企業は開発品目特有の問題についてCDEにWeb会議を申し込むことができます。

中国市場は2015年以前と比べると、組織改革、ICHガイドラインの全面的な受け入れを行い、諸外国が市場参入するにあたって、加速度的に良い方向に変化しています。また、は医薬品の研究開発が華々しい成果を挙げている裏で、単なる政府補助金や資本の投入という「飴」だけでなく、刑事罰導入のような「鞭」を用意しバランスを取りながら政策を進めているて点に注目すべきと考えます。

ヘルスケア分野のイノベーションは、中国経済の原動力の一つです。一方、中国国外の企業は、中国のイノベーション重視の姿勢から恩恵を受ける一方で、現地のニーズに応じた独自の規制に対応しなければならない課題に直面しています。したがって、今後数年間、中国戦略に関しては中国ローカルとの早期の連携に注力する必要があります。